人の身体に触れるということ

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人の身体に触れるということ

私たちアーユルヴェーダセラピストができることの一つにオイルを使ったマッサージがあります。アーユルヴェーダのマッサージでは、決まった手技があり、その手技に沿ってマッサージを行うことで、お客様の身体と心をより良い方向へ導いていきます。

では、特別な技術さえ身につければ、相手をより良い方向に導けるかというと、そういうわけではありません。反対に、「手当て」という言葉があるように、特別な技術がなくても「触れる」ということで相手の身体や心に働きかけることもできるのです。

今回は、人の身体に触れること、人から触ってもらうことについて、ご紹介したいと思います。

「触ってもらうこと」の大切さ

人は「触ってもらうこと」で幸せを感じられる

触れる

私は、セラピストの他に、リハビリの仕事もしており、高齢者に接することが多くありますが、かつての職場の大ベテランの先輩の言葉で忘れられないものがあります。

「赤ちゃんとか子供はかわいい、かわいいってみんな抱っこしたがるけど、年を取ったらね、誰からも触ってもらえなくなるの!!だからみんなリハビリの時間が大切なのよ」

老人保健施設に勤めていた時、退職や異動などのスタッフの都合で極端に人手不足になった時期がありました。
どうにも業務が回らないので、利用者さんのリハビリの回数を少しずつ減らしてもらおう、という提案をしたことがありました。しかしこちらの予想よりずっと激しく利用者さんから反対されて、びっくり。その反応の強さに驚いていたら、先輩がそう言って、「触れる」ことがいかに人の心を満たすものであるのかを教えてくれたことがありました。

スキンシップが心と身体を作る

『スキンシップを制限して乳幼児を世話をすると、ほとんどが幼児のうちに死亡してしまう。生き残っても障害が残った』というフリードリヒ2世やルネ・スピッツの実験からも分かるように、スキンシップは人の心身を育てるためには必須のものなのです。

マッサージに大切なのは、愛情、親切心、慈悲の心

当スクールの学長パーリタ先生は、ドクターでありながら、マッサージをするのが好きで、とても上手です。(アーユルヴェーダドクターの中には、マッサージはしないというドクターも多いのだそう。。)
そんなパーリタ先生がマッサージで大切にしているのは、マッサージを受ける人への愛情、親切心、慈悲の心です。
それを一番感じたのは「よくマッサージでお客さんの悪い気をもらうことがあるというが、どうしたらいいか?」という質問に対しての、パーリタ先生の返答でした。

「マッサージはエネルギー、プラーナの交換であり、それは気の浄化である。悪い気をもらう、ということは無い。お客さんはもちろん、自分も元気になるマッサージが良いマッサージである」

セラピストの中には「お客さんから悪い気をもらうこともあるから、しっかり対策する」という考えの方もいますが、私もこの答えを聞いてから、人から「ネガティブなエネルギーをもらっちゃうことってないの?」と聞かれた時、「ないですよ」と自信を持って答えるようになりました。

また、当スクールで学ぶことができるマッサージ手技を上手にできるようになると、その動きの中でますますプラーナ(気)が流れて循環するように出来ています。ですから、「マッサージをするとセラピストも元気になる」は本当なのです。

手は嘘をつけない

言葉はいくらでも嘘が言えますが、手は嘘をつけません。
触られると「この人はこんな人なんだな」「今、こんな気持ちなんだな」というのが伝わってきます。私は、スクールの生徒さんのサロントレーニング(初対面の人に接客、マッサージをする練習)で、マッサージを受ける機会があるのですが、自信のある・なし、集中してるかどうか、私の身体からの情報をキャッチしてるかどうか、ということはマッサージを受けながらとてもよく分かります。

技術よりも大切なことがある

もちろん最低限の技術の習得は必須ですが、技術が良ければOKというわけではありません。技術的としてはよい施術でも、お客様の身体や心に寄り添っていない施術は時に不快に感じさせることさえあります。もしセラピストとして、そのようなマッサージを提供してしまった場合、お客様の状態が一時はよくなったとしても、しばらくしたらもとに戻るか、より緊張した体になる可能性があるのです。

目の前のお客様の身体が、どんなに凝っていても、左右が非対称でも、捻れがあったとしても、それはそれでその人が自分を守るために作り上げた形なのです。

お客様の身体が「あれ?ここはこんなに力まなくてもいいのかも?」と思えて自然とゆるむ。その結果、凝りが取れたり、左右の非対称や捻れが消えるのが理想の形です。そして、そのタイミングに寄り添いながら、マッサージでサポートをするのがセラピストの役目なのです。

マッサージも、人間関係も、同じ

マッサージに限らず、日常の人間関係でも同じことが起きていますよね。
相手の本当に言いたいことを聞こうとして、まずはそのままの形を尊重する。自分の話を否定しない人に聞いてもらうことで、自分の思いに初めて気がつくことはよくあります。マッサージで触ってもらうことで「こんなに凝っていたんだ!」と気がつくのも、同じことです。誰かの存在、セラピストの手が、相手の鏡になるのです。

オイルは、愛

これまで、お話してきた通り、人の身体に触れるということも「愛」ですが、アーユルヴェーダのマッサージに、欠かせないオイルも「愛」です。サンスクリット語では、オイルのことを「スネーハ」といいます。スネーハには複数の意味があるのですが、その意味のひとつが「愛」なのです。

ここ数年、人と人の距離が何となく遠く感じるようなことも多く、人の温かさや愛情を感じる機会が減ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような時は、ぜひアーユルヴェーダのオイルマッサージを受けてみてください。また、自分のまわりの大切な人に愛情を伝えるひとつの表現方法として、マッサージを学んでみるのも良いかもしれません。

>>アーユルヴェーダ総合プロコース
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ライター

アーユルヴェーダセラピスト木代明子

木代明子
”出せる”身体、望みを叶える身体を作る。ワータ・ピッタ体質。主にさいたま市で活動中。
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2011年に英国アーユルヴェーダカレッジに入学。マッサージ実技のアシスタントの経験もあり。リハビリ職の作業療法士としての仕事も継続中。

極度の冷え性とアトピーを克服すべく様々な健康法を試す中、アーユルヴェーダに出会う。ハードな家庭環境に育ち、それ由来の生きづらさを解消するべく様々なセラピー、癒しや感情についての学びと実践に取り組む。幸せに生きるための心身を作るサポート、知恵を広げる活動を実践中。

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